top of page

中西さんのギター

  • Maki Ishimine
  • 2020年2月3日
  • 読了時間: 3分

深夜2時を回っても上手く寝付けない。確かに興奮しているけれど、でも、感情の熱を帯びた高ぶりはいつの間にやら落ち着いて、客観的な自分が戻っているみたい。それなら日付が変わったのでもう昨日へと行ってしまった、あの特別な時間のことを書き留めよう。

そのギターを聴いた最初の時から、私は彼のファンなのだ。出会いは20年近く前、夜の海の家でのことだった。バンドで演奏していたけれど、一つのギターの音色だけが特別印象的だった。あれから長い時間が経って、人生のいろいろがあって、漸くその憧れの人に自分の曲のギターを奏でてもらえることになった。

「何もできない」という曲。書いている時から頭の中には中西さんのギターの響があった。天然色だった日々がモノクロームに移ろい行く、そんな心の情景を歌った歌だ。そこに漂う音色はふわりとしたノイズ。そんな音は弾き込み過ぎて見た目ボロボロのガットギターで、さまざまな歪を奏でる中西さんにしか作れないとわかっていた。恐れ多いなぁとビビりながら、でもちゃっかりお願いしてみたら、中西さんはすらっと引き受けてくれた。

二度ほどの試しテイクで音色作りが終わり、それがあまりに頭の中の音にピタリと重なるので、パソコンの前に齧り付くように座っていた私は、ド興奮。そして、操作ミスしちゃならないと、もうド緊張。ドとドで頭から湯気が出そうだった。楽曲について人とコミュニケーションを取る時の譜面の書き方や、間違ったコード表記を指摘してもらいながら、試しテイクはもう少し続き、Aはこんな感じで、BはCは…というのが見えてくる。それを言葉できちんと伝えたら、もう後は中西さんの感覚と経験に委ねて、あっという間に出来上がった。

録音したての音を頭から通してみようということになり、その途中でいらない音を消して整理を試みた。が、そこで私、とちりました。消しちゃいけない音を消してしまい、それがどこにいったかわからなくなってしまったのだ。冷や汗いっぱい。でも、その箇所をもう一度弾いてもらえて、それがまたよくて、ただただ流石だなぁって感動したわけだ。ニヤケながら「エンジニアだったらくびだよねぇ」って言われて、頬がこける思いだったけど、本当にそうだと思う。

2時間もかからず終わり、極度の緊張から解放された私は、絨毯の上にへたばってしまった。「(創作の)スピードって大事だと思うんだよね」って中西さんが言った。ここにその意味を書くと長くなるからしないけれど、言わんとすることはよくわかった。

中西さんが帰った後は、素材が新鮮なうちに一つミックスしたくて、作業の「スピード」を意識しつつ、音の配置や音色の調整を試みた。やっぱりギターの音をそのまま生かしたくて、歌とピアノの音色の方を調和するように調整した。出来上がった基本のミックスをちゃんとしたオーディオで聴いて、まずまずだと思った。

最後の歌入れがある。自分の歌を新しい音色の中に安心して委ねられるように、明日からまたしばらく丁寧な練習をしていこう。

Comentários


bottom of page