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 バラッドって何? 

「バラッドって何?」

 

 「バラッドというのはだいたい12世紀頃からヨーロッパ各地に生まれた物語風の歌謡である。」と、藪下卓郎・山中光義 訳の『バラッド詩集ーイングランド スコットランド 民衆の歌ー』の冒頭にあります。12世紀と言えば、中世、そしてルネサンス時代の中頃なのでしょうか。

 

 バラッドは詞も曲も作った人がわかりません。民衆の中から生まれ、古い形のものは民衆が文字ではなく口承で歌い継ぐことで、長い間生き残ってきたものです。そんな物語歌の内容は様々ですが、恋愛の歌はとても多いです。けれど悲劇が多く、例えば身分違いの恋や、嫉妬、さらには呪いさえ含んだ歌もあります。そこには当時の民衆の生活に根ざした「教訓」めいたものが織り込まれているのです。他には戦記物のような、氏族と氏族の戦いを描いたもの、王にまつわる物語を描いたものも多くあります。

 

 15、6世紀になってくると、バラッドは口承伝承から紙伝承へと変化し、印刷文化の発展はブロードサイド・バラッドと呼ばれる瓦版タイプのバラッドを生み出しました。バラッドの近代化、都市化とも言えます。センセイショナルな事件などが、流行りのメロディに乗せられて物語調に歌われました。一方で、古い形の口承伝承のバラッドは失われつつありました。

 

 18世紀以降、それらの廃れゆくバラッドを保存するために、蒐集しテキスト化し出版する動きが盛んになり、古いバラッドたちの一部は文字として固定化されていきます。19世紀末には、それまでのバラッド蒐集の集大成として、フランシス・ジェイムズ・チャイルドと言う学者が”The English and Scottish Popular Ballads”を出版しました。通称チャイルドバラッドです。現在私たちがチャイルドバラッドを歌う時、そのレコードやCDなどにチャイルドNo.を明記することが多いです。

 

 さらに時代は下り、1950年代のフォークリバイバル以降、バラッドはロックなどとも融合しながら色々なスタイルで歌われるようになり、それらは録音媒体によりさらなる広がりを見せ、日本にも届くようになりました。私がバラッドを知り、惹かれ、歌ようになることができたのは、そのような録音媒体あってこそなのです。

 

 簡単ですが、バラッドの概要を書いたつもりです。個々のバラッドの魅力については、ライブの時に時間の許す限り紹介したいと思います。
 

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