金の針
- Maki Ishimine
- 2019年5月11日
- 読了時間: 2分
美しい若者の宝は 小さな金の針でした
決して使ってはならないと 言い伝えられていました
刺された者の時間を止める その針は魔法の針でした
三日月のように怪しく 彼の心を惑わすのです
彼の恋人がある日 流行り病に倒れました
ついに彼は金の針で 恋人を刺してしまいました
彼女の温もりはそのままで けれど時間だけ止まりました
頬も唇も色あせず 彼女は永遠に彼のもの
かわいい小鳥が舞い降りて 彼の肩でさえずりました
気づくと彼は金の針で 尾羽を刺していました
小鳥の温もりはそのままで けれど時間だけ止まりました
彼は眠る恋人の窓辺に 小鳥をそっと置きました
朝露に濡れた花を摘み 花びらを金の針で刺しました
花は眠る恋人の黒髪に いついつまでもきれいに咲きました
ララララララ…
あれから幾年経ったのでしょう 彼の時間だけが進みました
老いぼれてゆく我を悲しんで 彼は森を彷徨いました
どれほど歩き続けたのでしょう 彼は疲れ果てて倒れました
そして金の針を取りだすと 自分を刺してしまいました
悲しい魔法が解けた時 彼は星になりました
金の針は粉々になり 夜空に星が流れました
彼の恋人の目は覚めて 小鳥も羽ばたきさえずりました
彼女の黒髪から音もなく 萎れた花が落ちました
ララララララ…

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